2022 年4 月号vol .20

権力者の横暴を防ぐ憲法が危ない
『自民党が壊憲して創設しようとする緊急事態条項』
立憲主義の国が全体主義の国になってしまう

広告資金量の差がテレビ・ラジオ番組に及ぼす悪影響
前項では、電通の存在がどのようにして改憲派を有利にもっていくことができるかを記しました。改憲派が絶対有利なことは分かったと思います。ここでは、巨額の広告費がメディア各社に及ぼすであろう悪影響を列挙します。
改憲派と護憲派の広告宣伝費の投下額に大きな差が生じた場合、特にテレビやラジオなどの民放各社は、広告費の多い方に便宜を図る可能性が高い。また、その現場を仕切るのは改憲派の宣伝広告を担当する電通である。以下のような印象操作の可能性が生じる。
① スポット CM への発注金額に大きな差がある場合、ゴールデンタイムなどの視聴率が高い時間帯に、金額が多い方の CM をより多く流す。
これは通常でも行われている手法だ。当たり前だが、CM 発注金額が 100 万円のスポンサー 1000 万円のスポンサーは同列に扱われない。100 万円のスポンサーはゴルデンタイムに CM が 1 本しか流れないが、1000 万円のスポンサーは 5 本流れるというような自体が発生する。発注額が大きいスポンサーに、より便宜が図られる。

② 同じく発注金額が多く、かつ発注が早ければ、通常はなかなか獲得できないタイム枠(提供枠)のスポンサーになることも可能。
提供枠の売り買いは、通常春と秋の番組改編期に行われる。どの番組のスポンサーが降りるのかは秘中の秘で、その番組を担当している広告代理店に新しいスポンサーとの交渉優先 権があるから、テレビメディアのシェア 1 位の電通はここでも有利に立てる。
改憲派は国会発議のスケジュールをコントロールできるから、電通はそれに合わせてゴールデンタイムなど視聴率の高い番組を改憲派スポンサーのために購入することができる。
提供スポンサーになれば、その番組内で「改憲賛成」と意思表示する CM(30 秒)を複数回放映することができる。

③ 一見公平に見える討論番組でも、例えば改憲派は評論家や著名人を出席させるのに 対し、護憲派は高齢評論家や学者ばかりを揃える、というように、番組制作側による印象操作が可能。また、カメラワークによって映る表情や秒数で差をつけることもできる。

④ ワイドショーなどの紹介でも、放映される時間に差をつける、コメンテーターの論評で差をつける、そもそもコメンテーターも改憲派多数にするなどの操作をする。
これは別に特別なことではなく、日頃放映されている多くの番組で、日常的に行われている手法である。番組制作側がやりたいようにできるので、検証は困難。しかも現在の放送法 では特に「見せ方」に対する規制もない。CM 出稿金額が一方的であれば、カネを出して くれる広告主に便宜を図るのは当然である。

⑤ 同様に、夜の報道番組に改憲派の CM が多数入れば、それだけでその番組が改憲押しであるように錯覚させることが可能。また、報道内容でも放映に時間差をつけたり、印象を偏らせたりすることが可能。
「報道番組」と名乗っていれば、どちらかに露骨に肩入れすることはできないだろう。しかし、その番組の提供スポンサーとして改憲派(企業)の名前が連呼されれば、視聴者 は「そうか、この番組は改憲派寄りなのだな」と錯覚する。そのためにも、番組スポンサーになることは重要である。

このように、もし改憲派と護憲派の広告出稿金額がアンバランスで改憲派の方が圧倒的な広告料を投入できる場合は、テレビ・ラジオなどのメディアは露骨に改憲派の肩をもつ 番組制作を行う可能性がある。広告費をより多く出してくれるスポンサーに便宜をはかりさらなる金額の上積みを狙うのは、民間企業として当たり前であるからだ。実際、東電 福島第 1 原発事故以前の民放は、多額の広告費を支払ってくれていた電力会社に対し、忖度を行っていた前科がある。
このような不公平をなくすためにも日本民間放送連盟などによる細かな自主規制の設定が不可欠だが、国民投票法の施行以来、話し合いは一度も行われていない。

テレビの影響度
平日 1 日あたりのテレビの視聴時間全年代(10~60 代)平均で 174.3 分
インターネット利用時間 90.4 分
60 代以降のテレビの視聴時間 257.6 分、インターネットの利用時間 35.7 分
休日のテレビの視聴時間全年代で 231.2 分となっている。
インターネットが台頭してきたが依然としてテレビの影響力は非常に大きい。
テレビ CM は常に音と映像を発し、ユーザーが見ていようがいまいが、様々な番組や CMを流し続けている。そこで流される CM は回数が多いほど耳に残りやすく、ユーザーは 知らず知らずのうちに CM の音声や音楽、映像を覚え込まされている。もともとテレビはこうした「ながら視聴」に向いたメディアなのだ。そしてそれこそが選挙 CM などにおける優位性である。テレビ CM 規制は、そうした特徴をよく理解して行う必要性がある。

護憲派広告には、いざとなれば有名人が出演するという幻想
護憲派広告には様々な人気俳優や著名人が馳せ参じるからという声が聞こえてくる。
女優の吉永小百合さんや作曲家の坂本龍一さん、アニメーション監督の宮崎駿さんなどが護憲派の広告に出演したり作品を提供してくれるであろうから、それらを使えばイメージ戦略上で有利に立てるのではないかという意見がある。しかし、それが本当にそうなるのかはまだまったく分かっていない。
護憲派の側に立つことは自民党や経団連などの大手企業の反対側になるということだ。個人的信条はともかく、タレントや著名人のようにメディアで名を売り、生計を立てて いる人々には特別な意味を持っている。仕事上、将来的に仕事が受注できなくなる危険性が生じるからだ。そうなると、個人的には護憲派に与したくとも、事務所の方針で参加できない、意思表明できない人々が続出するだろう。海外では有名俳優が政治的発言をするのはごく当たり前だが、日本ではそういう例は極めて少ない。
さらに現実的な問題点をあげると、タレントとの交渉は非常に時間がかかる。ギャラ、登場する媒体(CM なのかポスターなのか)、使用されるカット数、セリフの内容、撮影場所と必要時間など、調整しなければならない事柄は山ほどあって、それらの調整は広告代理店などのプロでなければ難しい。
つまり、ここでも予め計画を立てて国民投票の発議から逆算して出演の交渉スケジュールを組める改憲派と、発議後に動き出そうとする護憲派では雲泥の差が生じる。仮に護憲派が国会発議後にさまざまなタレントや著名人に広告の出演交渉を行おうとしても、そのほとんどは事前に改憲派によって押さえられている可能性が非常に高い。電通にとって、あらゆる年代に人気のあるタレントをリストアップし、一斉に出演交渉することなど通常業務の延長線上であるから、ここでもその力の差を見せつけられることになるだろう。著名人がこぞって護憲派の広告に出演してくれるのではないか、というのは根拠のない幻想に過ぎない。

メディア規制の具体案と欧州諸国の規制
資金量の差、発注タイミングの差は圧倒的な印象操作を生む危険性がある。これは国民投票が目指す公平で自由な投票を妨げる大問題でなんとしても是正しなければならない。
このような状況を防ぐには、完璧ではないが規制を設けるしかない。

1 あらゆる宣伝広告の総発注金額を改憲派・護憲派ともに同金額と規定し、上限を設け国が支給する。1 団体 5 億円まで、全体総額 100 億円までとし、両陣営ともその金額の範囲内で使用メディアを選定、その内訳を公表する。

広告費の総額を決めて、国が支給する方式にすれば、寄付の多寡に左右されることがない。また上限が決まっていれば、国会発議後のスタートで改憲派の広告だけが氾濫するような 事態もなくなる。最初に広告費を使いすぎると、後半で資金不足になる。
国の予算で広告するのかという批判も出るだろうが、もともと国民投票を促す告知 CMなどは国家予算で賄うものであり、内閣府や官庁関連の広告費は現在でも年間 300 億円が使われている。際限ない広告合戦に膨大な資金が投入されるより、双方が同じ金額の範囲内で知恵を絞り、節度のある広告出稿する方が、国民の理解を得られるだろう。

2 テレビ・ラジオ・ネット CM における放送回数を予め規定し、放送時間も同じタイミングで流す。もしくは同じ金額とする。

これは、双方の広告費が同額かどうかに関係なく、テレビ(ラジオ)CM の放送回数を同じにして、電波メディアでの公平性を保つやり方だ。
あらゆる電波メディアで朝・昼・晩の 3 回、双方の CM を流す「国民投票 CM タイム」を設定する。そこで双方の CM を同じ秒数、同じ回数放映する。これは国民投票における スポット CM を禁止している欧州諸国が取り入れている方式である。
もしくは、双方の総放映分数だけを同じとし、その中で流れる CM の秒数については調整可能とする。例えば 5 分間という時間の枠だけを双方平等に設定し、その中で流す CM の秒数は問わない方式だ。

3 先行発注による優良枠独占を防ぐため、広告発注のタイミングを同じとする。

4 報道内容や報道回数、ワイドショーなどでの放映秒数などで公平性を損なわないよう、民放連に細かな規制を設定させ、違反した場合の罰則も設ける。

5 宣伝広告実施団体(政党・企業)の討論・ワイドショー・報道番組等へのスポンサード(資金提供、まるがかえ)禁止。

これらは民放連が自主的なルールを決め、運用を厳格に行えば実現可能。ただし、違反番組の通報先等、きちんとした整備が不可欠だ。

6 意見表明 CM も投票日 2 週間前から放送禁止(投票法 105 条準拠)とする。インターネットのポータルサイトなどでも同様とする。

現行法で禁止されているのは投票参加を促す CM だけなので、意見広告も投票日 2 週間前から放映禁止とする。個人がネットで拡散するのは規制できないが、ポータルサイトなどでの放映は禁止とする。このためには国民投票法の改正が必要になる。

7 いちばん高額であり、視聴者、民放各社にさまざまな影響を及ぼすテレビ CM を全面禁止とする。

そもそも広告予算の中でいちばん高価なのはテレビ CM であり、これのあるなしで広告費 の総額がまったく変わってくる。特に高いのは民放キー局で全国放映される CM で、ゴールデンタイム(夜 7~11 時)に流れる 15 秒 CM の単価は 1 回数百万円もする(単価は放映 される番組の視聴率によって変化するので、決まっていない)これは地方ローカル局の同じ時間に流れる CM の 1 本数万円~数十万円とは根本的に異なる価格設定である。 また、新聞社においても、全国紙とブロック紙、ローカル紙によって広告価格はまったく違う。例えば、『朝日』『読売』などの全国紙で 15 段(1 ページ)の広告を掲載すれば 3000 万円以上の掲載料が発生するが、ローカル紙の 1 ページならば 200 万円程度である。その全国紙に何度 1 ページ広告を掲載しても、ゴールデンタイムにバンバン CM を打つのとではまったく広告費が違ってくる。視聴率が高い時間帯にテレビ CM を打つのは、それだけで数億円の資金が必要だ。そして、その巨額ゆえにメディアの報道姿勢さえも揺るが しかねないことは、前述した通りである。
つまりテレビ CM(特にスポット CM)こそがいちばん高価でさまざまな悪影響を与える「諸悪の根源」なんだから、いっそのこと全面禁止にした方がスッキリする。ただし、CMという意見表明手段としての存在は残し、改憲・護憲派双方が公平に放送できる場を作る。それをきちんと実行している欧州諸国の例を次月で詳しく説明します。